相続手続きには、被相続人の出生から死亡するまでの戸籍が必要となります。
 人は出生により父母の戸籍に入籍し、婚姻によりその戸籍から除籍されて、新たに編製された
自分たち夫婦の戸籍に入籍します。また、他市町村へ転籍(本籍を移転すること)すると、
転籍後の市町村に新たな戸籍が編製され、戸籍の改製によっても新たな戸籍が編製されます。

 このように、人の一生の間には数通の戸籍が編製されますが、新戸籍には従前の戸籍に
記載されていた身分事項のうち、特定の重要なことしか移記されません。また、他市町村への
転籍や戸籍の改製が行われた場合には、死亡、婚姻(離婚)、縁組(離縁)などによって、
従前の戸籍から除籍された人は、新戸籍に記載されません。

(例)山田太郎(昭和28年生まれ、平成27年死亡)の戸籍の変遷
   ①昭和28年、山田一郎・花子の長男として東京都で出生、父母の戸籍に入籍
   ②昭和53年、田代春子と婚姻し新戸籍編製
     昭和55年、長女・夏子出生
昭和57年、春子と協議離婚、長女夏子の親権者は母・春子
   ③昭和58年、神奈川県に転籍し新戸籍編成
     昭和60年、加藤明子と婚姻
     昭和61年、長女・和子出生、昭和63年長男・正夫出生
   ④平成20年、平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製
    平成27年、神奈川県にて死亡し除籍

   この例では、山田太郎の出生から死亡までの戸籍は4通あり、①~④で表示しています。
  山田太郎が死亡した時点で、この例の登場人物全員が生存していた場合、太郎の
  相続人は、配偶者の明子、子の和子と正夫、そして前妻との子・夏子の4人です。

   しかし、③④の戸籍を見ても、以前に太郎さんが婚姻していたことや子がいたことは
  わかりません。前妻の春子と娘の夏子は、転籍前の東京の戸籍②で離婚に伴い
  除籍されており、転籍後の神奈川県の戸籍③には移記されていないからです。

 
そのために、ある人が死亡し除籍された戸籍だけを見ても、その相続人のすべてを確定する
ことはできません。したがって、相続手続きのために、被相続人の出生から死亡するまでの戸籍が
必要となるわけです。