遺贈と死因贈与

 人が死亡した後の財産処分の方法としては、相続のほかに遺贈と死因贈与があります。
遺贈と死因贈与のどちらも、自分の死後その財産を他人に無償で与えることでは一致していますが、両者の法的性格は異なっています。

遺贈

 遺贈とは、遺言によって他人に財産の全部または一部を無償で供与することをいいます。
その法的性格は、遺贈者による単独行為であり、贈与のような契約ではありません。
遺言によって財産を与える人を「遺贈者」、財産を受け取る人を「受遺者」といいます。

 受遺者は、相続が開始した時に生存している必要があり、遺贈者が死亡する以前に受遺者が死亡してしまうと、遺贈は無効になります。
 自然人のほかに、胎児、法人も適格者であり、受遺者となることができます。

包括遺贈と特定遺贈

①包括遺贈

 遺言者の全部または一部を割合をもって、受遺者に遺贈することをいいます。
例えば、「全財産の4分の1を山田みどりに遺贈する。」というように遺言書に記載します。
 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するものとされています。

②特定遺贈

 遺言者の特定財産を目的として、受遺者に遺贈することをいいます。
例えば、「東京都杉並区和泉3丁目○番○号所在の土地を山川和夫に遺贈する」というように 遺言書に記載します。

遺贈の承認・放棄

 包括遺贈の承認・放棄は、相続の承認・放棄と同様の手続きによって行われます。
したがって、受遺者は、相続の開始を知った時から3か月以内に承認・放棄を行わなければならず、これを行わなかった場合は、法定単純承認があったものとみなされます。

 これに対して、特定遺贈の受遺者は、遺贈者(遺言者)の死後いつでも自由に承認・放棄をすることができます。
遺贈の放棄の様式は特に定められていないため、遺贈を放棄する旨の意思表示をすれば足りるとされています。

死因贈与

 死因贈与は、文字どおり贈与契約であり、贈与者と受贈者の意思が合致することによって成立します。
つまり、贈与者の「私が死んだらA土地を無償で差し上げます。」という意思と、受贈者の「それでは、遠慮なくいただきます。」という、意思の合致が必要です。

 一方で、死因贈与と遺贈は、死後の財産処分に関するもので、贈与者(遺贈者)が死亡した時に効力が発生するという点で、共通しています。そのために、死因贈与には遺贈の規定が準用されています。