広い意味での代理と代行

 広い意味での代理とは、他人(本人)に代わってある行為をすることをいいます。
「父の代理で郵便局に郵便物を取りに行きました。」なんて言ったりします。
また、同じような意味で、代行という言葉も使われたりします。

法律上の代理と代行

 これに対して、民法の総則編に規定されている代理とは、ある人Aと一定の関係にあるBが、AのためにCとの間で意思表示を行い、あるいは意思表示を受けることによって、
その意思表示の法律効果が、直接Aについて生じることをいいます。

このときに、Aを本人、Bを代理人、Cを相手方といいます。
 法律上の代理は、上記のように代理権を付与された代理人が、代理人自らの意思で相手方と法律行為を行います。ここで重要なのは、代理人は自身で判断することができる点です。
 これに対して、民法上では代行という言葉は定義されていませんが、使者の行為がこれに当たると考えられます。
使者は、単なるお使いですから、自ら判断して意思表示することはなく、意思表示を決定するのはあくまでも本人です。
本人が自ら決定した意思を伝達するのが使者の役目であり、代理人とは決定的に違っています。
 これ以降は、民法上の代理について説明していきます。

代理の要件

 民法上の代理の要件は、代理権の付与、顕名、代理人と相手方の法律行為の3点です。
代理は、代理人がした法律行為の効果が直接本人に帰属するために、これを正当視するためには代理権が必要です。
顕名とは、代理人が代理行為として意思表示をする場合に、相手方に対して、本人のためにすることを示すことをいいます。

代理権

 代理人の行った意思表示などの法律効果が、本人に帰属するために必要な要件の1つです。
代理権には、本人の意思によって与えられる任意代理権と、法律によって与えられる法定代理権があります。
 代理権のない法律行為は、無権代理と呼ばれて原則として無効となりますが、本人が追認すれば、そのことによって代理権が補完されて有効な行為となります。
 また、代理権がありそうにみえる表見代理については、有権代理と同じく本人が責任を負うことになります。

任意代理

 本人の意思に基づいて代理権が生じる場合を任意代理といいます。本人と代理人の間の委任契約によって
生じる委任代理のほか、雇用・請負・組合などの契約においても代理権が生じ、これらを総称して任意代理といいます。

法定代理

 本人の意思に関係なく、法律の規定に基づいて代理権が生じる場合を法定代理といいます。
これは、自分の財産を自分で管理運用することができない場合などに、法律が代理人をおく規定を設けています。

委任状

 他人にある事務の処理を委任したことを証するために、委任者から受任者へ交付する文書をいいます。
厳密な意味での委任契約に基づくものだけをいうわけではなく、代理権を授与する契約について交付されることが多くみられます。この意味では、代理権を証明する文書ということができます。